経理として働く方の中には、年収アップのために転職を考えている人もいるのではないでしょうか。
しかし、やみくもに転職活動をしても年収がアップするかはわかりません…。
まずは、自分の市場価値を上げることが必要になります。
そのためには、英語力を身につけるなどのスキルアップや資格の取得が有効です。
ここの記事では、経理マンが市場価値を高めるための方法を「5つ」紹介します。
税理士試験の科目合格

税理士試験の科目合格をするメリット
税理士試験は、「会計学に属する科目」と「税法に属する科目」という2つの大きなジャンルに分けられ、さらに11科目に出題科目が分類されています。
その中の5科目に合格することができれば、税理士の資格取得となるのです。
ただし、5科目同時に合格する必要はなく、一度合格すればその科目は合格として扱われます。
不合格になった科目があれば、その科目のみを再受験すればよい仕組みのため、働きながらでも数年かけて税理士試験合格を目指すことが可能です。
では、なぜ税理士の科目合格が年収アップにつながるのでしょうか。
税理士試験の科目は、異なる専門領域から成り立っているため、科目ごとに独立した価値があります。
税理士試験は、1つの科目に合格するだけでも膨大な勉強量と知識が必要です。
合格率が10~15%と低いため、科目合格しているだけで難関資格を取得しているのと同等の価値があると認識される可能性があります。
その結果、転職に有利に働き年収アップが期待できるというわけです。
また、現在の会社の特徴に合った科目に合格することで、転職せずとも年収アップできる可能性があります。
例えば、個人の確定申告を中心に請け負っている税理士事務所であれば、所得税法に合格していると有利です。
相続関連に力を入れている事務所であれば、相続税法に合格している人が歓迎されるでしょう。
このように、それぞれの会社にとって価値の高い税理士科目に合格することで、能力や知識の評価へとつながり年収が上がることが期待できます。
さらに、企業内税理士のニーズが高まっていることもあり、税理士の科目合格者が働くことで経理部門の仕事効率が上がると捉えられることもあるでしょう。
評価されやすい科目
経理マンにとって有効なのが、会計学科目のうち「簿記論」「財務諸表論」の2つです。
会計実務学ともよばれ、企業の経理部門では即戦力として扱われるため、一般企業の経理部門に転職を考えている人に向いています。
また、税理士事務所などで税理士補助を行う際にも役立つ科目ともいえるでしょう。
近年、「簿記論」「財務諸表論」の合格率が高くなっており、非常にオススメの科目と言えます。
税法科目の中では、法人税法は毎年法人税の申告業務に追われることとなる一般企業への転職に有効です。
より大きな規模の会社へ転職するのであれば、会社法関連の業務が増えることが予想されるため、法人税法の科目に合格していれば優遇される可能性があります。
税理士試験の科目合格をするには?
税理士試験は、毎年8月に行われ、12月に合格者が発表されます。
5科目すべての合格までに平均で約10年かかるといわれており、各科目の合格率は10~15%前後と難易度としては非常に高いです。
独学での合格はほぼ不可能と言われており、多くの方が予備校を使用しています。
最近では、スキマ時間にスマホで学習できるオンライン通信講座もコスパが高く人気となっています。
各科目の合格ラインは、満点の60%が目安とされていますが、実際は成績の上位から約10~15%が合格する「相対試験」となっています。
そのため、簿記論なら約450~500時間、法人税法は約600時間など、多くの勉強量を確保する必要があります。
科目によっては、難易度がやや下がったり、合格ラインが低かったりと差があるため、比較的難易度の低い科目からチャレンジするのも一つの方法です。
自分自身の得意や不得意、職場や転職先のニーズなど幅広い視点から受験科目を選ぶようにしましょう。
税理士試験の科目合格をアピールするには
年収アップを目指した転職をする際、税理士試験の科目合格だけでももちろんプラスに働きます。
しかし、実務経験があれば一緒に伝えることで、即戦力になることのアピールにもつながるでしょう。
特に、科目合格で培った知識を活用した実践例があれば、具体的なエピソードを話すと効果的なので、できるだけ多くのエピソードを準備しておくと安心です。
また、「転職先で合格した科目の知識をどのように活用したいか」について伝えることも忘れてはいけません。
採用担当者に対する熱意のアピールにもつながります。
「なぜ会計事務所ではなく経理なのか」についてはっきりと答えられるようにしておきましょう。
日商簿記1級

日商簿記1級とは
日商簿記は、税理士や公認会計士への登竜門として知られる資格です。
さらに、大手外資系企業や大企業の経理部長実務にも必要な資格といわれています。
試験は、毎年6月と11月に行われ、年齢や学歴、実務経験といった制限なく受験することが可能です。
4科目それぞれが25点満点で、合計70点以上で合格となります。
しかし、1科目でも10点以下をとってしまうと合計点が70点以上でも不合格になるリスクがあります。
合格の難易度は、1級の場合、求められる知識レベルが格段にアップするため、非常に高い傾向です。
さらに、出題範囲は2級の3倍ともいわれており、論理的な思考力と正確な簿記の知識が求められます。
そのため、丸暗記だけでは到底合格することができません。
大企業への転職に有利
日商簿記1級は、経理転職の中でも特に大企業への転職に有利とされており、合格することで年収アップが見込めるでしょう。
大企業では、経理の担当業務がいくつかに分かれています。
例えば、「財務部門」の場合、棚卸資産管理や固定資産管理、決算業務が担当です。
同部門では、関連会社や子会社の決済業務を指導及び監査したり、連結決算書を作ったりします。また、「資金部門」では、会社の資金繰りが担当です。
必要な資金額に応じ、銀行からの借り入れや社債、自社株の発行などを行い、資金調達を適切に行います。
一方、「経理部門」は、内部管理会計が担当で、予算実績分析や原価計算、設備投資判断などが業務内容です。
予算計画の作成や経営判断を会社全体に伝えたりすることで、会社の全部門を目標に向けて引っ張っていく役割を担っています。
日商簿記1級を取得していれば、どの部門に配属されても力を発揮することが期待でき、即戦力として役立てることができるでしょう。
ベンチャー企業への転職に有利
成長期や成熟期に入っているベンチャー企業への転職を希望する場合にも、経理の知識全般を網羅した日商簿記1級の資格保有者は、高く評価される傾向です。
会社の成長に伴い、処理する案件が増えたり多様化したりすることで取り扱う金額が増えます。
そのため、不正が発生しない仕組みの構築や、業務の定型化が必要です。
さらに、株式上場すれば、四半期ごとの報告書作成といった業務も必要となります。
こういった業務を効率的かつ正確に行うには、日商簿記1級の知識がうってつけでしょう。
急速に成長する企業では、自社にはない知識を持つ人材として、日商簿記1級の資格保有者が評価されるのです。
昇進による年収アップにも有利
さまざまな人材が集まる大企業の経理部でさえ、日商簿記1級を持っている人は数名しかいません。
イレギュラーな会計処理の判断や、新たな経理システムの導入などの業務は、日商簿記1級を取得している人が必要不可欠です。
そのため、人事考課で高評価につながり早い段階での管理職昇進が期待できるでしょう。
場合によっては、経理財務部門のトップの最高財務責任者(CFO)への昇進もあり得ます。
企業のグローバル化によって、国際会計基準が導入され始めている傾向です。
そのため、ヘッジ会計や連結会計、企業統合などの論点についての知識を持つ日商簿記1級ホルダーは、最高財務責任者として必要な素養の一部を身につけていると判断されやすいでしょう。
日商簿記1級を取得するには
日商簿記1級取得への門は狭く、合格率は10%前後です。
そのため、簿記2級の知識がある状態から勉強を始める場合、1,000時間程度の勉強時間が必要だといわれています。
1日3時間の勉強で約1年かかるため、平日2時間休日5時間を目安に勉強するとよいでしょう。
勉強の方法としては、「市販のテキストを使用して独学で行う」「予備校や通信講座の利用」といった選択肢があります。
ただし、試験範囲が広く難易度も高いため、モチベーションを保ちながらすべてを自力で理解して進めていくことが難しい傾向です。
独学での合格は非常に難しいため、予備校や通信講座を利用し効率的に学んでいくとよいでしょう。
BATIC
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BATICとは
BATIC(バティック)は、国際会計検定のことで、国際会計基準をもとに会計スキルのレベルを測ることができます。
試験は、すべて英語で出題され解答も英語でなくてはなりません。
400満点となっており、取得した点数に応じて初級・中級・上級の3つの称号が与えられ、受験者の理解度を証明してくれます。
国際会計基準への対応が必要な企業で経理事務を担当する場合、初級~中級レベルのスコアが求められる傾向です。
部門長クラスへの昇進を狙うのであれば、中級以上の称号を持っていることが望ましいといえます。
BATICの価値
BATICで高スコアを取得すれば、国際的な会計基準に関する知識と、ビジネスシーンで使える英語力を持っていることの証明となります。
そのため、転職や昇進に有利に働くといえるでしょう。
海外に子会社がある日本の企業では、経理業務がシンプルになるというメリットがあるため、国際会計基準を導入するところが増えてきています。
また、海外進出を目指す企業も国際会計基準を導入するケースが増加傾向です。
BATICを取得することで、国際会計基準の理解が深まるため、今後さらにニーズが高まる資格といえるでしょう。
また、BATICでハイスコアを出したということは、会計だけでなく英語のスキルも持っているアピールにもなります。
英語のスキルは、TOEICなどでも証明できますが、会計の専門用語に関する英語力の証明にはなりません。
しかし、BATICは簿記や会計に関する問題や解答もすべて英語のため、専門性の高い英語力があることをアピールできます。
BATICでハイスコアを取得するには
BATICに向けての勉強は、日商簿記3級程度の会計知識があればスムーズにできるといわれています。
公式テキストを使い、独学での勉強が可能です。
簿記の知識がない場合、市販の公式テキストでの独学は難しいため、専門学校や商工会議所主催の講座などを利用するとよいでしょう。
英語力に関しては、TOEIC500点以上の知識に加え、会計に関する英単語を暗記することで対応できるといわれています。
簿記3級程度の知識がある場合、会計に関する英単語の暗記にかかる勉強時間は約40~60時間が目安です。
1日2時間ほど勉強することで、1カ月もあれば受験に必要な会計に関する英単語が習得できると考えられます。
そのため、申し込みをしてから勉強を始めても十分に間に合うはずです。
リスクマネジメント力

リスクマネジメント力アップで市場価値もアップ
経理が行うリスクマネジメントは、主に3つあります。
1つ目は、「財務報告の信頼性チェック」です。具体的には、以下のような内容を確認します。
・実在する会計事象に基づいているか
・記載されている金額が正しく測定及び評価されているものなのか
・期間配分や表示が適切か
2つ目は、「業務の効率化や安全性のチェック」です。主に以下の内容を確認します。
・企業に損害を及ぼす可能性のある事象が生じていないか
3つ目は、「コンプライアンス違反チェック」となります。
これら3つの業務に共通して必要なのは、会社のお金の流れに対する危機管理ができるかどうかです。
経理の業務内容は、細かいものが多く、後回しにしたりおおざっぱに取り組んだりすることは許されません。
例えば、支払いミスや税金滞納、未回収金の発生などのリスクがあり、場合によっては取引先からの信用失墜や会社の業績悪化など、会社に大きな損害をもたらす可能性があります。
トラブルが起こってから対応策を考えていては、遅いのです。
そのため、起こりうるリスクを予測したうえで、迅速に動いて最小限の被害で済むようにするためのリスクマネジメント力が、経理マンとしての市場価値を高めてくれます。
リスクマネジメント力を高めるには
リスクマネジメント力を高めるには、普段からの先入観を持たないことが大切です。
例えば、「絶対に大丈夫だ」「問題ないだろう」などと最初から考えてチェックすることは望ましくありません。
「もしかすると○○が起こるかもしれない」といった想定外のリスクを念頭に置きながら取り組むように心がけましょう。
さらに、最悪に事態を想定しておくことで、リスクを見つけやすくなります。
また、漏れなくリスクを洗い出すためには、正しいプロセスで継続してリスクマネジメントに取り組むことが効果的でしょう。
最初に行いたいことは、「リスクの特定」です。リスクの内容を明確にすべく、さまざまな部署の社員からリスクを列挙してもらいます。
幅広い視点で検討することで、リスクの漏れを防ぐことが期待できるでしょう。
「起こるはずがない」という先入観を持たず、列挙することが大切です。
次に、リスクの分析と評価を行います。
リスクの分析とは、リスクによる影響と発生確率を把握することです。リスクの重大さが可視化されるので、リスクを見比べて対策を練る優先順位を決めていきます。
繰り返し行うことで、あらゆるリスクに対応できる力がつきます。
さらに、優先順位が高いリスクに対する具体的な対策案を検討しましょう。
例えば、「損失を金銭で補てんする」「リスクによる損失の頻度や大きさを抑制する」といった方法があります。
具体的なリスク対策が決まれば、すみやかに実施することが重要です。
対策をモニタリングしたり改善したりすることで、より一層質の高い継続的な実施が可能となります。
このように、リスクマネジメントの正しいプロセスを追いながら繰り返し取り組んでいくことで、リスクの見落としを防ぎ企業の未来を守ることができるのです。
英語力

英語力がなぜ経理に必要なのか
経理での転職を考える場合、年収アップを狙うのであれば外資系企業もしくは国内企業の英文経理への転職が一つの方法といえるでしょう。
英文経理とは、英語で会計を日本の会計基準に直して処理する業務のことです。会計に関する英単語や、海外の会社とコミュニケーションをとるための英語力が求められます。
外資系企業の場合、親会社の外国法人に決算報告を行う必要があります。
そのため、親会社と同じ国際会計基準で、同じ会計システムを使い普段の業務から経理業務を行っているのです。
親会社への報告をするだけでなく、日本での税務申告もしなくてはなりません。
国内企業の場合は、海外に子会社を持つ企業が該当します。
外国の現地法人で営業活動を行っていたり、海外に製造拠点があったりしても、日本の子会社で経理を行っている場合が多く、経理職も英語を使う機会が増えています。
英語力を上げるメリット
英語力を高めることで職域が広がるため、年収アップが期待できるでしょう。
例えば、日本企業の海外進出や海外現地法人への派遣、外資系取引先との調整など、仕事の幅が広がります。
英文経理はもちろん、電話やメールの対応、通訳、英文での資料作成、来客対応などもできるようになり、求人数も多い傾向です。
経理の実務経験と専門知識、高い英語力のすべてを兼ね備えている人材は希少価値が高く、年収アップが期待できます。
また、英語力を高めれば、そのスキルを使って新たな資格の取得も可能です。
例えば、経理部長への昇進条件としている企業も多いTOEICや、国際会計検定、米国会計と英語の知識を証明できるUSCPAなどがあります。
英語力を高めるには
経理として必要な英語力は、2種類あります。
1つは、専門用語の習得です。
特に、英文経理を目指すのであれば、海外の決算書を正確に読み取ることが求められるため、決算書に載っている会計用語や勘定科目に使用される単語・熟語を覚えなくてはなりません。
もう1つは、ビジネス英語です。
海外の企業とスムーズにやり取りするためには欠かせません。ビジネス英語の習得は、以下の3つの内容を意識して行うとスムーズです。
①ビジネス英語に必要な基礎を固める
基礎となるのは、会計に関する単語力です。
単語を覚えるには、絵やイラストを活用したり、日常生活のリアルを英語に変換したりするのが効果的といわれています。
声に出すことで、頭だけでなく体を使ってアウトプットし覚えていくことができます。
日常会話でその単語が出てきたときに、すぐに英語に変換できるレベルまでしっかりと覚えむとよいでしょう。
②イメージ化とフレーズ化
身近なビジネスシーンを想定し、その現場でとっさに使えるフレーズを作っていくという作業です。
電話対応や資料作成、報告など具体的な場面を想定し、その場面でとっさに使えるフレーズを英語に変換し覚えていきます。
覚えたフレーズを使って、普段の業務状況を説明したり、一人でロールプレイングをしたりすることで、よりスムーズに使えるようになるでしょう。
③発音にもこだわる
英語の後追いをしながら発声したり、音声を聞いて書きとったりする方法があります。
ロールプレイングを繰り返し行うことで、想定していたようなビジネスシーンに遭遇したとき、とっさに理想的な英語でコミュニケーションをとることが期待できるでしょう。
まずは自分の市場価値を知ることが重要

経理マンとしての市場価値を高める前に、現在の自分の市場価値を知っておく必要があります。
なぜなら、市場価値よりも低い年収で雇われている可能性があるからです。
実務経験年数や保有資格が同じでも、年収が大きく違うことはよくあります。
もしかすると、市場価値を高めるために苦しい努力をしなくても、転職するだけで年収をアップさせることが出来るかもしれません。
自分の市場価値を知るには、会計業界に精通した転職エージェントに相談してみるのがオススメです。
なぜなら、転職エージェントは採用側企業と頻繁にコンタクトを取っており、どのような人材が経理業界で求められているのかをリアルタイムで把握しているからです。
英語力だけじゃない!5つの資格やスキルを身につけ経理マンとしての市場価値を高めよう!
経理マンとしての市場価値を高めることができれば、年収アップも夢ではありません。
市場価値を高めるには、プライベートの時間を削ったり仕事に対する意識を変えたりすることも必要です。
なかには、日商簿記1級や英語力のように、長期的に取り組まなければ取得できない資格やスキルもあります。
まずは、普段の仕事と平行して無理なく取り組める、自分に合った資格やスキルを選んでチャレンジしてみましょう。
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