
令和5年に実施される税理士試験から、受験資格が変更されます。
この記事では、「受験資格の変更内容」や「簿財を取得するメリット」などについて解説します。
税理士試験の受験資格はこう変わった
令和5年(2023年)実施の税理士試験から受験資格の要件が変更になります。
変更点は次の「2点」です。
②:「学識による受験資格」が一部拡大された
変更点①:「簿財」の受験資格は完全に撤廃された
令和5年の税理士試験から「簿記論」「財務諸表論」の2科目については、受験資格が不要となりました。
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(出典:国税庁HP)
変更点②:「学識による受験資格」が一部拡大された
簿記論と財務諸表論については令和5年から受験資格が無くなり、誰でも受験可能となりました。
しかし、税法科目については令和5年以降も受験資格が必要です。
税理士試験の受験資格には、「学識による受験資格」「資格による受験資格」「職歴による受験資格」の3つが存在します。
令和5年の税理士試験から「学識による受験資格」の要件が一部拡大となります。
変更前と変更後は内容は以下の通りです。
変更前 (令和4年まで) | 変更後 (令和5年から) |
大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、法律学又は経済学に属する科目を1科目以上履修した者 | 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を 1科目以上履修した者 |
大学3年次以上の学生で法律学又は経済学に属する科目を含め62単位以上を取得した者 | 大学3年次以上の学生で社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得した者 |
専修学校の専門課程(修業年限が2年以上かつ課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る。)を修了した者等で、法律学又は経済学に属する科目を1科目以上履修した者 | 専修学校の専門課程(修業年限が2年以上かつ課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る。)を修了した者等で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 |
司法試験に合格した者 | 変更なし |
旧司法試験法の規定による司法試験の第二次試験又は旧司法試験の第二次試験に合格した者 | 変更なし |
公認会計士試験短答式試験合格者 (平成 18 年度以降の合格者に限る。) |
変更なし |
公認会計士試験短答式試験全科目免除者 | 変更なし |
要するに…
法律学又は経済学に属する科目 ⇒ 社会科学に属する科目
に変更となったわけです。
では、「社会科学に属する科目」とはいったいどんな科目を指すのでしょうか?
「法律学又は経済学に属する科目」と「社会科学に属する科目」の具体的な科目は以下の通りです。
法律学又は経済学に属する科目 | 社会科学に属する科目 |
法学、法律概論、憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法など
(マクロ又はミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済など |
法学、法律概論、憲法、民法、刑法、商法、行政法、労働法、国際法など
(マクロ又はミクロ)経済学、経営学、経済原論、経済政策、経済学史、財政学、国際経済論、金融論、貿易論、会計学、簿記学、商品学、農業経済、工業経済など 社会学、政治学、行政学、政策学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学など |
つまり、「法律学又は経済学に属する科目」に、赤字の科目をプラスしたものが「社会科学に属する科目」になります。
上記の科目以外にも、受験資格に該当するケースがあります。
ご不明な方は、必ず最寄りの国税局で確認してみて下さいね。
簿財を取得するメリット
令和5年の税理士試験から「簿記論」「財務諸表論」については、受験資格が撤廃され誰でも受験できるようになりました。
でも、簿財だけ取って何かメリットあるの?
と思う方もいるでしょう。
実は、「簿記論」「財務諸表論」を取得すると就職や転職で非常に有利になります。
特に、「企業の経理」や「会計事務所」への就職・転職を目指す方には特に有効です。
経理職への就職・転職
企業の経理職は事務職の中でも人気の職種。
したがって、求人数が多い一方でライバルも非常に多いです。
しかも、企業の経理職は「実務経験が圧倒的有利」とされています。
未経験の方が企業の経理職として採用されようとすると、ライバルよりハイランクの資格を持っておくことが重要となります。
ちなみに、「簿記論」「財務諸表論」のどちらか1つを持っていれば、上場企業の経理職も狙えるほどです。
中小零細企業の経理職であれば、応募者のほとんどが「簿記3級・簿記2級」を持っている程度です。
なので、簿記論または財務諸表論を持っていれば、採用される可能性はかなり高くなります。
会計事務所への就職・転職
将来、税理士を目指す方は必ずと言っていいほど「会計事務所」に一度は就職します。
「簿記論」「財務諸表論」のどちらか、または両方を持っていれば、会計事務所への就職・転職にもかなり有利です。
会計事務所は会計と税務のプロフェッショナル集団ですので、高度な会計と税務の知識が要求されます。
その点で言えば、簿記論・財務諸表論を持っていれば、会計の知識はほぼ完璧と言えます。
また、会計事務所も企業の経理職と同様に、「実務経験が圧倒的有利」とされています。
未経験でも年齢が20~30歳くらいの若い方でしたら、簿記論または財務諸表論のどちらか1科目を持っていれば、採用される可能性はかなり高いです。
簿財の合格率は高い
気になる「簿記論」「財務諸表論」の合格率ですが、令和3年の税理士試験では
簿記論 ⇒ 16.5%
財務諸表論 ⇒ 23.9%
となっています。

(出典:国税庁HP)
実は、簿記論と財務諸表論は、税理士試験の受験科目の中でも合格率が高いことで知られています。
「試験の難易度」「過去の10年の合格率推移」についてはコチラの記事も参考にして下さい。
簿財の勉強方法
では、簿財はどのように勉強すればいいのでしょうか?
結論から言うと、「予備校または通信講座を使って勉強する」です。
「独学では無理なの?」とお考えの方もいると思いますが、僕はあまりおすすめしません。
税理士試験の独学な難しい理由を詳しく書いた記事があるので、気になる方は参考にして下さい。
また、予備校や通信講座にもいろいろありますが、正直どれを利用しても合格は可能です。
ただ、一つだけ言いたいのは、選ぶ際に「確保できる勉強時間」と「用意できる学費」に着目するという点です。
高い教材を使っても、カリキュラムが消化不良になり、試験に落ちてしまった方を多く見てきました。
逆に、格安の通信講座でも1年で「簿記論」「財務諸表論」の2科目に合格した人も沢山います。
予備校・通信講座の選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
コスパで選ぶなら「スタディング税理士講座」
少しでも安く簿財を取りたい!
そんな方は業界最安値の「スタディング税理士講座」がおすすめ。
スタディングなら「簿財2科目」で59,800円(税込)からと、大手予備校の1/6程度の受講料です。
スタディングは安さだけでなく、スマホで勉強できる通信講座としても大人気です。
2022年は、俳優の「玉木宏さん」がテレビCMされていますね。
税理士の僕が、実際に利用したレビューはコチラの記事で詳しく解説しています。
大学生は簿財に挑戦しよう!
従来の受験資格の場合、基本的には大学3年生にならないと税理士試験の受験ができませんでした(簿記1級等を持っている場合を除く)。
しかし、今回の受験資格の緩和で、簿財については誰でも受験できるようになりました。
したがって、大学1年生でから税理士試験を受けることが可能です。
在学中に税理士試験の簿財を取得できれば、就職活動をかなり有利に進めることができると思います。
もし順調に行けば、卒業時には「税理士」になっている可能性だってあります。
特に、僕も通っていた「Fラン大学」の学生は、どうしても就職活動で苦戦しがち…。
「簿財」という強力な武器を備えて、就職活動に臨むのも作戦の一つだと思います。
よくある疑問
疑問①:簿財に合格したら税法科目の受験資格になる?
受験資格にはなりません。
税法科目を受験するには、「学識による受験資格」「資格による受験資格」「職歴による受験資格」のいずれかを満たす必要があります。
ただ、税理士試験の受験者数は年々減少傾向にあります。
2021年度(令和3年度)の税理士試験の受験者数(実人数)は27,299人で、2009年度(51,479人)の53.0%にまで減少しています。
今後も受験者数の減少に歯止めがかからなければ、受験資格がさらに緩和される可能性はあると思います。
疑問②:簿財の受験者数は増加する?
令和5年は増加すると予想されます。
ただ、簿財の合格率が今までのように高いかどうかは全く予想できません。
簿財の受験者数があまりにも多ければ、税法科目と同じぐらいの合格率(12~14%)になる可能性はあると思います。
疑問③:何時勉強すれば簿財に合格できる?
予備校や通信講座のHPなどを見ると、「簿記論:450時間」「財務諸表論:450時間」を目安としているところが多いです。
ただ、学習を始める時点での「簿記知識」によって勉強時間も異なります。
日商簿記1級をお持ちの方でしたら、450時間で合格レベルに達する可能性が高いです。
しかし、簿記3級程度の知識だと450時間では足りない可能性もあります。
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